ケルン講習会

 3月下旬にkimusubi道場主催の遠藤先生の講習会に参加してきました。会場はケルンの体育大学構内にある体育館です。ドイツといえばサッカー、サッカーといえばケルンスポーツ大学というくらい有名な大学ですが、会場のすぐ隣がブンデスリーガ二部・FCケルンの本拠地であるラインエネルギースタジアム、しかも現在私が滞在している居住地から自転車で20分という素晴らしい立地でした。講習会最終日の日曜日は、ちょうど稽古終了と重なる時間帯でサッカーの試合のキックオフがあり、稽古会場の建物から出た瞬間からサッカーの応援と歓声が鳴り響いていました。ちなみに3月31日の対ホルシュタイン・キール戦の試合は4-0でFCケルンが勝ちました。

 そんなケルンスポーツ大学内で行われた遠藤先生の講習会ですが、kimusubi道場主催ということで、ヨーロッパ各国から参加者が集まっていました。2月上旬に参加したヘルシンキの講習会で見かけた人たちも結構いました。また昨年佐久道場に長期滞在していて、江東区合気会の合宿でも見かけたマシューさんも参加されていました。マシューさんの黒帯にはしっかりと佐久道場の名前があり、遠いヨーロッパの地で佐久道場の漢字を見て少しほっとしました。私のほかに、日本人はドイツ国内から3名、オランダから1名の方が参加していました。このうち、ボンから来ていた女性は、デュッセルドルフの浅井先生の道場に所属されている方で、遠藤先生の講習会に参加するのは日本国内の講習会を含めて今回が2回目とのことでした。

 講習会の稽古は、遠藤先生の挨拶、How are you?から始まりました。この英語の挨拶に数人がFine.と答えると、遠藤先生はそのFine.と答えた気持ちを、身体を使って表現してくださいと再度問いかけました。面食らったようになかなか動かない私含めた参加者一同に対し、遠藤先生が出した指示が「スキップしてください、はい、どうぞ。」です。そこから数十人の参加者が畳の上を往復すること数回。「こういうことですよ、このスキップしたときの気持ちを忘れないでください。」と遠藤先生が言います。私がこの時感じたのは、朗らかな、リラックスした気持ちでした。そのすぐあとの見取り稽古は、ケルンのKishintai道場のJörgさんの受け身でスタートしました。Jörgさんの道着には「陽久」の名前が入っています。もちろん読み方は「ヨーク」ですが、「陽」と「久」の漢字の意味から連想される、太陽、陽気、永遠、時間の悠々たる流れなどのイメージからこの講習会の始まりにピッタリだなと感じました。

 今回の講習会の中で特に印象に残ったことが「相手のバランスを崩す」です。片手取り一教では相手との間合いを考え、二教では相手の向かってくる気を捉え、それをコントロールして相手のバランスを崩すということを行いました。相手のバランスを崩すにはどうするのかという説明の中で、「ゆっくりとした動作で、自分自身をチェックすること。勝ち負けではないし、受けと取りは競争相手でもない。自分自身の動きを確認してください。」と指示がありました。また、受け身に対しては、「生きたい!生きたい!生きたい!」という気持ちがないと、それは死んでいる受け身になると言及されました。稽古は競争しているのではなく、相手と対話をし、相手の気を感じるとることが大切だと話されました。稽古中に遠藤先生に「いきたい」はどうやって言うのかと質問されたとき、私は実は「行きたい」と「生きたい」のどちらなのかわからなくて返答に困ったという苦い経験をしました。いま講習会の内容を振り返ると、生きるために前に進む必要があり、前に向かって進みたい、前に行きたいというその「生きたい!」という気持ちが、合気道での「気」なのかなと思います。

 最後に私が面白いと感じたエピソードを一つ。相手の気をコントロールしてバランスを崩すという説明の中で、一人の大柄な男性が見取りの受けとして呼ばれました。見取り稽古の中で、遠藤先生は何度もThank you.と繰り返し言われました。その理由として、この大柄な男性の気が、しっかりと遠藤先生の方向に向いているため、簡単に遠藤先生はその男性の気をコントロールすることができるからだと説明がありました。一方で、遠藤先生が稽古中に小柄な女性の二人組を見つけて稽古をされたあと、一度全体の稽古を止めて、彼女たちの柔らかい動きとその気のコントロールについて言及される場面もありました。この対照的な二つの場面は、相手のバランスを崩すために、相手の気をどうやって捉えて、どのようにコントロールしていくのかということを、私の今後の稽古の課題にさせた出来事でした。

Kimusubi道場HP
http://kimusubi.com/